お知らせ

中野上町で伝統を守る職人たち

織物工場や染物工場が多く残るまち、八王子市中野上町。第三回目となるCOB Project第三弾となる今回の工場見学ツアーは、中でも注目を集めている2軒の染工場にお邪魔しました!

 

主に藍で浴衣生地を染める野口染物店と、シルクスクリーン印刷を行なう奥田染工です。募集人数をはるかに上回る17名の参加者のみなさんにお集まりいただき、一番遠方の方はフランスから!?そして中国からもご参加いただきました。

 

まずは野口染物店の7代目野口さんに、藍染について教えていただきます。

 

野口染物店7代目野口さん(右)

天然藍で浴衣を染める野口染物店

藍染工房「野口染物店」の創業はなんと江戸時代。210年を超える歴史を持つそうです!八王子は繊維産業が有名なのは知っていましたが、そんな長い歴史のある工房があるなんて、取材させていただくまで知りませんでした…。

 

型紙を使い、細かい柄を染めで出すことができる野口染物店。主に浴衣生地を染め上げているそうです。

 

とーっても細かい柄が施された生地

一体どうやってこんなにも細かい柄を出しているのでしょうか。その秘密を1つご紹介します!

柄を出すための防染のり

いきなり藍染から入ると思いきや…なにやら生地に赤い柄が。頭の中では藍色でいっぱいだったので、「なんで赤色?!」と最初は戸惑いました。

 

ヘラを使い、なめらかな手さばきで防染のりを塗っていく野口さん。軽々と塗っているように見えましたが、力加減や柄と柄を正確につなげる技術がいる作業だそうです!均等に赤い柄ができあがる光景は、見ていて痛快な気分。参加者の皆さんも釘付けでした。

 

長い生地に繰り返し防染のりを塗っていく野口さん

柄の型を作るのは大変な作業で、江戸時代に作られた細かい型紙を彫ることのできる職人さんはもういないそうです。というのも、型を彫る職人は、彫刻刀も自分で作っていたそう!一枚の型紙を作るのにとてつもない労力と技術力が必要です。コンピュータでは出せない「味」を細かい柄とともに表現できる職人は、現代ではいないんだとか。つまり、型がなくなったらその柄を出すことができないのです!未来に残すべき本当に貴重な財産ですね。

天然の藍で藍染体験

藍染の今回の見学会の中でもとても楽しみにしていたイベント、藍染体験です!いくつも並んだ、味のある釜の中に染液が入っています。釜によって色の濃さが違うそうです。

 

味のある釜が並んでいます

野口染物店で扱っている藍は、徳島県産の天然藍。天然藍は釜の管理が大変だそうで、職人の手間が非常に重要だそうです。そのため、天然の藍で藍染体験をさせてもらえるのはたいへん貴重なことだそう。藍染素人の私たちに快く体験させてくださる野口さん、ありがとうございます!

早速、各自で持ってきた生地やシャツ、反物やバッグを染めました。

 

皆さん真剣な様子で染めています

天然の藍はハイドロの藍と違い、匂いがほとんどありません。「藍染体験は匂いがちょっと…」という方、イメージがガラッと変わりますよ!

 

やってみると、意外に楽しくてはまりそう

後でお世話になる奥田染工場の奥田さんも、天然藍の染体験に大興奮のご様子。「こんなにニオイのしない藍を使った染め体験ははじめて!」と、バッグやTシャツなど、様々なものを染めていらっしゃいました。

 

 

藍の感触を素手で楽しむ奥田さん。流石職人!

次に、染めたものを干します。染めたてはとても濃い紺ですが、空気に晒す酸素と結合してだんだん藍色になるんです!染める回数によって色の濃さが変わります。天然の藍を使える機会は日本全国探してもなかなかないので、ついついご厚意に甘えて何回も染めてしまいました笑。

 

干すとみるみる藍色に変わっていきます

爪や手首まで天然藍に染まってご満悦の奥田さん

夢中になりすぎて手も一緒に染まってしまいましたが、こんな経験は滅多にないのでこれもご愛嬌。野口さん、本当に貴重な藍染体験、ありがとうございました!続いては、野口染物店から歩いて15分程度の場所に位置する、奥田染工場にお邪魔します。

シルクスクリーンといえば奥田染工場

染め体験が終わったあとは、そのまま歩いて奥田染工場へお邪魔します!シルクスクリーン印刷を行っている奥田染工でも工場見学をさせていただきました!味のある建物が特徴の奥田染工は、まさに「町工場」の雰囲気。

 

染物の歴史から丁寧に説明してくれる奥田染工の奥田さん

まず初めに案内していただいたのは、色の調合場です。棚にはズラッと染料が置いてありました。少しでもデザイナーさんの希望に添えるよう、細かな計算をしながら調合をしているそう。奥田さんの「デザイナーさんといい仕事がしたい」という思いが伝わってきます。

染料が並んだ部屋。聞いたこともない名前の色がずらりとありました

シルクスクリーン場へ

さて続いてはシルクスクリーン場へ。捺染台(なっせんだい)と呼ばれる長ーい台が遠くまで伸びています。幅が違う捺染台もあり、どんな発注がきても対応できるようにしているそうです!

捺染台が並んでいる光景はどこかSFの世界

捺染台に生地を置き、版をまその上に置きます。左から右に柄を擦っていくそう。台の裏には蒸気で熱が通るようになっているそうです。

捺染台には版の跡も残っていました

お宝満載の事務所

最後に、数え切れないほどの生地やサンプルが置いてある事務所へ案内していただきました。奥田さん、次から次へと惜しげもなくこれまで染め上げてきた生地を見せてくれます!

生地や本、サンプル資料などが詰まった事務所

シルクスクリーンで金の柄をあしらった銀色の生地。実験をしながら金と銀のはくつけを行ったそう。こんなきらびやかで繊細な生地にも触らせていただきました。

金と銀で表現されたきらびやかな生地

とても古いサンプル資料も残る奥田染工。ここに見える白い柄は、なんと全て手書きだそう!気が遠くなりそうな作業です…。でもこんな遊び心のあるネクタイがあったら絶対一目惚れしてしまいますよね!

 

ネクタイに使われる柄のサンプル

奥田さん、貴重なお話ありがとうございました!

八王子に残る稀少な技術。情熱を持って後世に技術を残そうとしている人たちがいるからこそ、丁寧で味のあるものが生まれるんだなーと実感しました。八王子にこんなすごい技術があるなんて、少し誇らしいです!野口さん、奥田さん、貴重な工場を見せて頂きありがとうございました。

ご参加頂いた、クリエイターのみなさんとも良い出会いになったようで嬉しいです。

 

—今回訪れた八王子の染工場

◆◆◆野口染物店◆◆◆
ナント!江戸時代から武家の裃を作っていた
創業210年を超える藍染工房 野口染物店
住所:東京都八王子市中野上町4-20-11
電話:042-622-6313

 

◆◆◆奥田染工場◆◆◆
デザイナーとコミュニケーションを積み重ねて
新しい布のカタチを生み出す 奥田染工場
住所:東京都八王子市中野上町1-12-14
電話:042-622-2594

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