基本情報

有限会社 澤井織物工場

東京都八王子市八王子市高月町1181

042−691−1032

FAX 042−691−1729

伝統工芸品「多摩織」の担い手


八王子市街から北に山を2、3越えた所に水田が広がる地区があり、その一画に織物工場があります。江戸と明治の境ぐらい、創業推定120年の歴史があり、伝統工芸品「多摩織」の担い手である有限会社澤井織物工場を訪れました。

 

 

伝統工芸品「多摩織」

COB】早速ですが、「多摩織」とはどのようなものなのでしょうか。

 

澤井織物工場4代目、伝統工芸士の澤井伸さんにお話を伺いました

澤井織物工場4代目、伝統工芸士の澤井伸さんにお話を伺いました

【澤井さん】「多摩織」は八王子織物だけではなく、あきる野で製造される織物を含めて「多摩織」となります。5つの品種があり、お召織、紬織、風通織、変り綴、捩り織。冬物、夏物と、袴地、着物全般の織物になります。ウチは元々、全体的にやっていたのですが、最近は紬織だけです。

 

※普通は1産地1品種なのですが、元々八王子は多品種産地ということもあり、 伝統工芸品の認定の際に整理して5品種になったそうです。

 

【COB】その5つの織物が、この辺では割合が多かったということでしょうか?

 

【澤井さん】そうですね。認定の時に、大学の先生とか、国立博物館の織物担当の方が市場調査に来られて、組合のほうで、これとこれを伝統工芸しましょう。というものをまとめました。 例えばこの近くだと、村山大島紬というのがあって、そこは何軒かの業者が経糸、緯糸、作り方を含め同じものを作っていたのですが、八王子の場合は一つに絞り切れなかったというのがあります。

 

しっかりとした、良い意味で渋く存在感のある風合い

しっかりとした、良い意味で渋く存在感のある風合い

【COB】触り心地、確かに着物地ですね。織り方、使うものの制限、ルールみたいなものはありますか?多摩地区産の糸を使わなければいけないとか。

 

【澤井さん】作るものによって、経糸、緯糸の密度とか制作の仕方は全て違ってくるのですが、規定として経糸が何本、何デニール(太さ)、経糸、緯糸の密度の規定の範囲内で行わなければなりません。糸の産地は指定されていません。

 

お召織。ちりめんのようなよれのある見た目だが、過程も物も異なる

お召織。ちりめんのようなよれのある見た目だが、過程も物も異なる

紬織。経糸に玉糸、緯糸に真綿紬を使用しています

紬織。経糸に玉糸、緯糸に真綿紬を使用しています

風通織。二重に織ってあり、布と布の間に風が通るという事から風通

風通織。二重に織ってあり、布と布の間に風が通るという事から風通

変り綴。これと風通は袴地に使用される

変り綴。これと風通は袴地に使用される

捩り織。紗の織物、夏の着物などに使われている生地

捩り織。紗の織物、夏の着物などに使われている生地

 

伝統から新しい道へ

【COB】そういえば「多摩織」とは異なりますが、紙で出来た織物があるとか。

 

【澤井さん】これです。来年の夏に向けて提案しているのですが、シルクだと元が高価だし、下着など含めると着るのにコストがかかるのですが、紙の方は浴衣の延長上で着ることができます。浴衣よりは高級になるのですが、浴衣で行けないところにも着ていく事ができます。紙から出来た糸があって、それで織っています。

 

上側が絹。着物として全く問題がなさそう

上側が絹。着物として全く問題がなさそう

【COB】紙って、耐久性がないイメージがありますが。

 

【澤井さん】紙の原料が違います。これはマニラ麻から出来ていて、耐久性があります。整理加工でこの柔らかさになります。

 

【COB】あと去年GoogleとLevi’sのプロジェクトへの協力で注目されていましたね。

 

※Project Jacquardといって洋服をウェアラブルデバイス化するプロジェクト。例えばジャケットの袖口をタップやスワイプして、スマートフォンを操作できる。澤井さんは導電性の糸の(強度の)部分で協力をしたそうです。

 

【澤井さん】もう私の手は離れています。近い将来実用化されるのではないでしょうか。

 

 

手織りと機械

【COB】あとは、基本的にどのようなお仕事が多いのでしょうか?

 

【澤井さん】OEMのマフラー、ストール、服地ですね。90%を占めます。残りの10%が「多摩織」、着物関係です。「多摩織」は注文が来たらやるぐらいです。

 

【COB】では基本的に機械ですね。手織りはよっぽどの時だけですか?

 

シャトル織機が並ぶ工場

シャトル織機が並ぶ工場

こちらは元々長屋だった建物。レピアは1台

こちらは元々長屋だった建物。レピアは1台

余談 スペースシャトルはこのシャトルの形状が由来だそうです

余談 スペースシャトルはこのシャトルの形状が由来だそうです

【澤井さん】注文がないとやらないですが、OEMで手織りのものもありましたよ。多いときは2,000枚も手織りというのもありました。

 

「多摩織」で使用される手織り械

「多摩織」で使用される手織り械

【COB】手織りの体験もやっていらっしゃいますが。見学なども多いのでしょうか。

 

【澤井さん】体験はちょこちょこ来ますね。見学は前より増えたかな、去年は海外からが多かったです。

 

こちらの工房で手織り体験ができます

こちらの工房で手織り体験ができます

 

継承について

【COB】「多摩織」に関して今後の目標とか、逆に問題点などございますか?

 

【澤井さん】今、「多摩織」も業者の人が少なくなって来て、12年従事していないと資格がとれないなど基準があるので、若返りがなかなか難しいです。

 

※伝統工芸士認定試験を受けるのに、実務経験年数など条件が幾つかあります。

 

【COB】御社の場合は社員を雇用していますよね? 今若手の方もいらっしゃいますか?

 

【澤井さん】一番若いのは今年入って来たコがいます。その前は去年。出たり入ったり、入れ替わりは激しいです。独立する人もいるし、学校に行く方が多いですね、後は他のメーカーさんに移ったり、様々です。

 

【COB】これからも毎年定期的に新しい人材を確保していく感じでしょうか?

 

【澤井さん】そうですね、毎年入れていきたいです。というのは、新旧を入れ替えていかないと、周りが全体的に衰退して来ているので、ウチで最終的に織れるようになってないと、他に振れないので。 たまたま今、オリンピックの招致があったから、文化が見直されている帰来だけれど、もっと前から、みんな文化を継承していれば大分状況も違ったんですけれど。

 

【COB】まさに以前の東京オリンピックと真逆の感じがしますね。前は大量生産などで伝統が廃れていくきっかけだったと思います。

 

【澤井さん】前の時は経済を発展させて、海外工場へ進出していきましたね。 そういったところと、競合するわけにもいかないので、違う路線を自分で考えていかなければいけないのかなと思います。括りは、オールジャパンとか、メイドインジャパンとかうまく打ち出していかないといけないのかなと思います。

 

 

高くても良いものが売れてほしい

「多摩織」や繊維業だけではなく、様々な業界で価格競争があり、長く使える良いものは需要が少なくなってしまいました。伝統工芸は、その技術や製品がただ歴史的に重要で珍しいから保存をされているのではなく、良いものだから伝統になり、保存、普及されようとしているのではないでしょうか。良いものは、素材から工程まで、作るのに手間がかかる分高価なのですが、良いものを我々消費者が自ら捨て去らないように、伝統工芸品自体や、それを使う暮らしにも目を向けていく必要を感じました。

 

すぐ近くに水田があります

すぐ近くに水田があります

澤井織物工場では、見学や手織りの楽しさを気軽に体験できます。周囲の景色ものどかで、東京なのに小旅行気分。見学体験の予約は2週間前までだそうです。

 

また織物についてのお問い合わせは

 

有限会社 澤井織物工場

東京都八王子市高月町1181

TEL 042-691-1032

FAX 042-691-1729

基本情報

有限会社 澤井織物工場

東京都八王子市八王子市高月町1181

042−691−1032

FAX 042−691−1729