徹底した効率化で小ロットにも対応のNC旋盤加工
様々な製品に使用されている金属部品、それを生産する工場は、同じ形のパーツを量産するイメージでした。というのも、どの製造業でも小ロットの案件を何件も抱えると仕事が回らなくなるので、そのような発注は嫌がられるという傾向があったからです。(1つの図面から1個のものを生産するより、大量のものを生産し続けた方が、効率的で儲かるという仕組み。)
例えるなら、昔学校の先生から誰もが言われた「人の嫌がることを率先してやる」。そのような姿勢で、小ロットから量産までの旋盤に対応し、評価を得ている工場、株式会社信濃精機製作所。その柔軟な態勢についてお話を伺いました。
株式会社 信濃精機製作所 倉田隆さん
【COB】まず旋盤加工と聞いて、精密機器のパーツを量産しているイメージがありますが、創業以来、事業内容は同じなのですか?
【倉田さん】工場がスタートしたのは、会長である父の代からです。会長はもともと材料を供給するメーカーの営業でした。あちこちの工場に出入りする機会も多く、それで製造業に興味を持ったそうです。元の会社を辞めた理由は別にありますが、昭和45年4月に独立し倉田製作所を設立しました。以来、旋盤加工で現在まで続いております。
【COB】そして、NC旋盤とはいったいどのような工程なのでしょうか?
【倉田さん】わかりやすくいうと、そうですね、いわゆるプログラムを組んで、その数値によって丸い棒(主に金属)を削っていくものなんですね。知識と経験だけで、(手仕事を省略して)あらゆる形に削ることができる機械を使います。
【COB】実際はどのようなものを作っているのでしょうか?わかりやすい例を挙げるならば…
【倉田さん】一番わかりやすいのが、OA機器のシャフト、それと軸流ファンのシャフト、例えばパソコンの冷却ファン。また自動車に搭載するコンプレッサーの部品といったところがメインです。あとは挙げだすとキリがないですね。
これなんか、昔良くみたと思いますが、わかりやすいでしょうか。
工場の特色
【COB】競合というか同業って日本中ありそうなものですが、その中で選ばれる理由について教えて下さい。
【倉田さん】よくお客様から言われるのが、「立ち回りが器用」ということです。大きい量から小さい量まで両刀でこなしているので、その辺の便利さ、それと短納期に対応しているというところで、高評価はいただいております。
意外と、仕事を発注する側も、小ロットだと気を使うものでして、例えば自動車をメインにやっている工場さんとかは、数少ないモノの見積もりは出しにくい。でもウチは色んな業種の方とお付き合いがあり、元々小ロット発注の業種もやっているので、少ない量でも遠慮なく発注して下さいって言うと、非常に受けがいいのですね。
不思議なことに自動車業界をやっている工場は、品質はいいけど、数少ないものはやってくれないというイメージがあるようです。確かに、実情はそうです。ウチはそのような状況を脱却して、品質はもちろん、便利に使ってもらっています。
【COB】そうした態勢も、生産工程を徹底して効率化したから出来る。そんな印象をうけます。
工場を見学させて頂きました
【倉田さん】こちらが工場になります。1人4台の機械を担当し、それが6セットあります。どれも仕組みは同じですが、機械によって対応サイズや細かい機能は異なります。
【COB】カバーがかかっているものなんですね。中で加工が行われているのですか?
【倉田さん】機械を止めてみてみましょう。奥に材料を置き、プログラムをすると、あとは自動で加工していきます。
こちらに数種類の刃物がついていて、削っていきます。
削ったものはこちら側から出てきます。
【倉田さん】こちらが先ほどお話したコンプレッサーの部品の一部ですね。
加工工程以外も、ものづくりには大切な要素
【倉田さん】品質管理も、ものづくりの重要な部分です。ぜひそちらもみて下さい。こちらの部門では、測定器で実際作った製品の大きさ、角度はもちろん、表面の凸凹を検査し、お客様の要望通りのものが出来ているか確認をします。
ここでは作り込みの段階で、精度を確認し、OKならば初めてそこで製品の量産ができます。
【倉田さん】こちらが検査部門です。こちらは実際量産したものを確認していきます。こちらも測定器での確認と、最後は人の目で、汚れなどをチェッックします。さすがに汚れは機械の判断でできませんからね。
進歩するために
【倉田さん】これはネタなのですが、10年前ぐらいにこんなに小さなものの案件もありました。
【COB】あ、ありました。こんなに細かいものまで作れるのですね!
【COB】色々な形の製品を作っていますが、図面を渡されてから、削り出すまでが大変そうな印象です。
【倉田さん】金属の材質は沢山あります。削っていて簡単なものもあれば、難しいものもある。削るのがむずかしいものを難削材といいますが、そういうものもあえてやる。小さいころ先生にいわれる「人の嫌がることをやれ」というのが大事で、そこを避けないようにしないと一歩先にはいけないと思っています。 その時悩んでも、その努力が5年後、10年後に実って会社のステップアップになればいいと思っています。
【COB】1回つまずいても、それがその後普通に出るようになれば、出来ることがどんどん増えますね。
工場の自動化と、人の手(知識、経験)が両立して活躍している旋盤工場。徹底した生産管理と品質管理が、次のステップへの機会を作り、その実績と信頼につながっているのではないでしょうか。
株式会社信濃精機製作所
東京都八王子市下恩方町308-24
TEL 042-652-1501