基本情報

株式会社栄鋳造所

192-0154

東京都八王子市下恩方町350

TEL 042-651-9790

http://www.sakae-v.com

※COBのサイトを見たとお伝えください

砂型アルミ鋳造技術で日本の底力を世界に発信する


アルミ鋳物鋳造工場 栄鋳造所の鈴木隆史さん

 

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今日は“鋳物(いもの)加工”を専門とする栄鋳造所の鈴木隆史さんを訪ねました。鋳造とは、加熱して溶かした金属を型に流し込み、冷えて固まった後、型から取り出して作る量産に適した金属製品の製造方法です。栄鋳造所のVプロセス鋳造法では砂型の成形が容易であり、製品を砂型から取り出す時には、簡単に砂型が崩せるので重宝されています。だからこそ「他社との差別化を図りたい」と考えた鈴木さんは新たな技術開発に取組み、近年では様々な展開も進めているそうです。早速、鈴木さんにお話を伺って参りました!

 

鋳物工場の歴史、鈴木さんが起こした改革

COB】栄鋳造所はどのようにスタートし、どのようなものを作っているのですか?

【鈴木さん】昭和24年に祖父が鋳物工場をスタートさせました。当時は高度経済成長期の頃ですので、とにかく仕事には困らなかったようですね。電線の幹線管輅を作ったり、車のシートや新幹線の部品を月に何千個も作ったりしていたそうです。祖父、叔父、父と代替わりした頃、バブルが弾けて製造業の多くの業務はASEANに流れていきました。必死に営業に力を入れて業績を伸びつつあったのですが、加えてリーマン・ショックが起きました。 この頃から「誰でも出来る仕事をするだけではダメだ、うちはうち独自の技術力を使った製品を創り出さなければ生き残れない」と思い、今まで鋳物では困難とされていた形状や薄物形状の製造も可能にさせる高付加価値アルミ鋳物が御提案出来るようにとVプロセス工法を導入しました。更にこのVプロセス工法を使用して製作した“水冷式薄型冷却プレート(コールドプレート)”は、アルミの板とパイプを一体化して鋳造する独自技術です。融点が650℃のアルミに融点1000度以上の銅やステンレスパイプを入れると、通常は熱膨張で曲がってしまいますが、それを当社では、板の厚さは8mm、パイプの直径は6mm、間隔は1mmから最小0.5mmの高精度で、パイプをほぼ中心に安定させる技術を習得しました。 この “水冷式薄型冷却プレート(コールドプレート)”は世界の大手半導体メーカーでも採用していただき、技術力の高さを評価していただけるようになりました。他にも、このコールドプレートを応用した循環型熱移動システム「アクアシステム」や、鋳物製の高性能スピーカー「KOON」など、鋳造の技術力を伝えることの出来る自社製品の製造・開発を開発しています。

 

 

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鋳物で製造することでクリアな音の出るKOONはベンチャー企業と開発

シェルをアルミ鋳造で製作したスネアドラム

シェルをアルミ鋳造で製作したスネアドラム

【鈴木さん】お客様がどれくらいの量をどれくらいの期間で製造したいかによってコストを考え、型の素材や製造方法も検討します。鋳物は型を作り、金属を流し込んで成形するのですが、まずはどのように鋳物が製造されているかの工程をお見せしますね。

 

 

鋳物の後加工を行うマシニングセンター

鋳物の後加工を行うマシニングセンター

予算と使用期間に合わせて硬質ウレタンやケミカルウッド等、素材を使い分けます

予算と使用期間に合わせて硬質ウレタンやケミカルウッド等、素材を使い分けます

最近では、協力工場にて3Dプリンターで型を作ることもしばしば

最近では、協力工場にて3Dプリンターで型を作ることもしばしば

早速Vプロセスの工程を見せて頂きました

工場を案内してくれた若きホープ北隅さん

工場を案内してくれた若きホープ北隅さん

【北隅さん】まずは先程の工程で製造した木型に厚さ0.1mmの特殊フィルムを使って形状を転写させ、砂を流し込んで型を作ります。細かい形を作るのが得意で、安定して供給できるVプロセスですが、取扱いが難しいので、国内でもこの技術を導入している工場は数社しかないそうです。砂で作った型には750度に熱したアルミを流し込みます。だいたい30分程度で冷えて固まるので、砂型から製品を取り出した後砂は冷却して再利用します。

 

 

削り出された型にVプロ用特殊フィルムを装着

削り出された型にVプロ用特殊フィルムを装着

熱を加えてフィルムを軟化させ、型にフィルムを吸着させます

熱を加えてフィルムを軟化させ、型にフィルムを吸着させます

O.1mmの特殊フィルム

一般的にはこのような木型を使って鋳造するそうです

一般的にはこのような木型を使って鋳造するそうです

大きなクレーンを使って重量のある砂型を移動させます

大きなクレーンを使って重量のある砂型を移動させます

素材となるアルミの塊。まるで金塊のようですね

素材となるアルミの塊。まるで金塊のようですね

砂型の移動はスタッフのみなさんで。チームワークが重要です

砂型の移動はスタッフのみなさんで。チームワークが重要です

750度に熱せられたアルミの液体

750度に熱せられたアルミの液体

アルミの液体を慎重に砂型へ流し込みます

アルミの液体を慎重に砂型へ流し込みます

鋳物についている余分なバリを慎重に取っていきます

鋳物についている余分なバリを慎重に取っていきます

こうして出来上がったVプロセスにより鋳造された製品

こうして出来上がったVプロセスにより鋳造された製品

COB】水冷式薄型冷却プレート(コールドプレート)には栄鋳造所の技術の結晶が詰まっているのですね!世界の大手半導体メーカーで採用されているとのことでしたが、他にはどのように活用される可能性があるのでしょうか

 

【鈴木さん】鋳物内のパイプに水を通すことで冷却作用があるので、熱を取りたい製品にも使えますし、逆にパイプに熱線を入れることで熱を加えることも可能ですので、具体的には釜飯屋さんから、ヒーター入りの一人前の釜を作りたい、なんてお話を頂いています。他にも、雪国では雪降ろしで怪我人が出ているニュースをよく目にするので、ヒーター入りの瓦屋根を作れたら世の中に貢献出来るかな、と考えています。

 

様々なチャレンジを続ける栄鋳造所

COB】社内の多国籍化にも力を入れることで、日本で初めて難民申請者を雇用した実績もあるとのことですが、どのような経緯で難民の受け入れたのですか?

 

【鈴木さん】製造業って、日本では当たり前のように値段が叩かれる世界なんです。“水冷式薄型冷却プレート(コールドプレート)を実現できたことで、従来の板材に切削やプレス加工してパイプをかしめる方式に比べ、コストは1/3にはなりましたが、これを打開することが本当に難しい。値段で叩かれない世界に行けないか、と思って、当時誘われたニューヨークの展示会に出展しました。その時驚いたのが、日本じゃ絶大なる知名度のあるNTTって、アメリカでは3%も知られてなかったんですよ。これは、アメリカじゃ全く無名の栄鋳造所もチャレンジ次第では可能性があるなと感じたんです。それから、シリコンバレーにも視察へ行ったのですが、5000社もの物作り企業がある中で9割が中国、韓国、台湾の企業だと知り衝撃を受けました。Appleのような大手企業から受注を受けている中国系企業では、2年先まで仕事は埋まっていると知り、一方で自分たちは来月の仕事の心配をしている。この大きな差は、言葉の壁<発信力の差>だと感じたんです。日本は決して技術力では劣っていない、日本で磨いたものづくり技術で、世界に挑みたいと思い、日本に帰るとすぐに、迫害や内戦から祖国を逃れ日本に滞在している、難民認定待ちであり特定活動の在留資格を持っている外国人を探しだしました。彼らには、日本語と日本の企業文化を教えた上で1年の研修期間を経て正社員として雇用しました。

 

今雇っているカメルーン人の社員は英語とフランス語が堪能なんです。中東やアジア出身者のスタッフと合わせると、日本語のほか、英語、ドイツ語、フランス語、ペルシャ語、韓国語の6カ国語に対応できるようになりました。弊社のホームページはイタリア語、ロシア語、合わせて8カ国語対応しています。僕は、テロの危険がある国から、若い意欲のある人達を連れてきて、労働力として頑張ってもらいながら、裏から支えられたらと思い、彼らには「うちでしっかり技術を学び、母国の紛争が落ち着いた時に、この技術を持ち帰って活かして欲しい」と伝えています。そんな活動が認められて、経済産業省による「ダイバーシティ経営企業100選」にも選んで頂きました。

 

 

グローバルな展開を語る鈴木さん

グローバルな展開を語る鈴木さん

ちなみに、外国人も日本人も賃金体系は同じです。スキルアップも欧米化させました。就業時間中に外国人は日本語を、日本人は英語を勉強出来るようにしているんです。外国人を採用するようになったことで、日本人社員も英語を勉強し、彼らとコミュニケーションを図るようになりました。年間の休日も増やし、月1回はコンサルタントを呼んで勉強会も行い、現場の声を取り入れることで無駄をなくすなど社内改革をしています。

 

 

外国人にもわかりやすいように掲示物も英語で表記されている

外国人にもわかりやすいように掲示物も英語で表記されている

グローバル展開をしていきたい人材を募集中

製造業って人材不足が続いているんです。でも、先日韓国の大学へ講義をしに行った時に、日本のアニメや文化が好きで、日本で働きたいと言う大学生が話を聞かせて欲しいと、長蛇の列を作ってくれたことに驚きました。彼らは、英語はもちろん、日本語も流暢に話せますから、即戦力になると感じました。近年、売上げの7割は海外との直接取引きになりました。今、彼らのように若くて発想力豊かなエンジニア、マーケティングの出来る人材、そして海外に進んで行きたいという、栄鋳造所をよりグローバルな世界に引き上げてくれる、向上心の強い人材がほしいですね。

 

最近では嬉しいことに、新卒採用を希望する日本の大学生からも「自分の力を試したい」「自分も外国へ行けますか?」と、電話をかけてくれるようになりました。北隅もその一人です。大学在学中に丸3年、うちでアルバイトとして働いてくれて、生産管理や0からお金を産み出す仕組みを考えてくれました。

 

自分の父が不慮の事故で無くなったので、今は見積り方法も、重量、時間や利益率、形状・コストの下げ方等社員に開示し、工程表や収益報告も全て社員みんなで共有出来るようにしました。みんなで共有することで、みんなのやる気も出るし、不良品も減りました。

 

 

日本の中小企業の技術やサービスを伝えたいと海外向け雑誌を制作

日本の中小企業の技術やサービスを伝えたいと海外向け雑誌を制作

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いかがでしたでしょうか?数年でこれ程事業展開していくことが出来るとは…と、鈴木さんの視野の広さとフットワークの軽さに感動しました!世界に目を向け、他の中小企業も直接海外と繋がりグローバルな展開ができるようにとご尽力されている鈴木さん。日本の技術力の高さを世界に発信したい方、栄鋳造所の技術力を自社製品に活かしたい方は、是非鈴木さんに連絡してみてくださいね。

 

株式会社栄鋳造所

192-0154

東京都八王子市下恩方町350

TEL 042-651-9790

http://www.sakae-v.com

※COBのサイトを見たとお伝えください

基本情報

株式会社栄鋳造所

192-0154

東京都八王子市下恩方町350

TEL 042-651-9790

http://www.sakae-v.com

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