基本情報

有限会社藤本染工芸

東京都八王子市元横山町1-24-2
042-642-8804
http://fujimotosen.jimdo.com

 

手染めの味と伝統が今も活きる


有限会社 藤本染工芸 藤本義和さん

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伝統を守り、その魅力を発信し続ける染色工房、藤本染工芸に伺いました。そこで気が遠くなるような手染めの作業を続ける藤本さんは、代表的な「木版染め」など作品が様々な媒体に取り上げられ、多方面にファンを持つ染め師。手染めの味と温もり、そして藤本さんの魅力が詰まった工房にお邪魔いたしました。

 

染め師 藤本和義さんから素敵なお話を沢山頂きました

染め師 藤本和義さんから素敵なお話を沢山頂きました

手染めの魅力に迫る

【COB】今では希少な木版染めを続けていらっしゃいますが、それに出会うまでの経緯を教えてください。

 

【藤本さん】私は高校を出てすぐ、新宿の染色工場に弟子入りしました。それが昭和29年。江戸小紋を染めている日本でも有数の工場でした。今の流れはもちろんそこからです。 木版染めに出会ったのは修行中なんですが、修行中は勝手なことはできませんから、実際やりはじめたのは修行を終え八王子に戻ってきてからです。出会いは、正倉院の国宝展でした。そこに一番古い木版で染めた、小さな染め布をみたんです。これの染色はどんなもので染めてるのかといったら、それは木版染めだと、で、それを色々調べていったら、それには古い歴史があり、非常に技術的にも難しいけれども、(型染めが主流になっているので)木版染めの流れがなくなってきている。ということがわかりました。その時見たのは木版染め更紗という、江戸よりももっと古い時代から伝わる柄だったのですが、それを見た時の綺麗さや染め具合の面白さに興味を持ちました。で、自分が独立した後に、本業(型染め)をやりながらイタズラ(遊び)で自分で版を彫り、ぽつらぽつら木版染めの作品を作るようになっていきました。

 

【COB】型染めと木版染め、それぞれ魅力はどんなところでしょうか。

 

【藤本さん】型染めは生地に筆や刷毛の力で濃淡色を刷り込んでいくので、仕上がりは柄がはっきりとします。一方、木版染めは生地に対して版画のように柄を押していくので、生地の厚みや凹凸で色の入り具合が違います。押した1色の中にさらに濃淡が生まれる、その味や柔らかさが魅力です。

 

 

型染めは染め部分の輪郭がはっきりしています

型染めは染め部分の輪郭がはっきりしています

木版染めは生地の凹凸によって変わる濃淡が魅力的

木版染めは生地の凹凸によって変わる濃淡が魅力的

【COB】両方とも、違った魅了がとてもありますね。では、それらを作り出す実際の手仕事を見せて頂いて宜しいでしょうか。

 

伝統を守り続ける技術

【藤本さん】まずは型染めの糊置きです。模様が繰り返し生地に置かれるように星(型紙にあいている小さな点)を目印に型紙をずらして繰り返し糊を置いていきます。この型置きの糊の技法は江戸時代からずっと変わってないです。このヘラを動かすだけでも非常に難しく、この習得には3年と修行時代には言われました。

 

こちらが防染糊、わかりやすいように色をつけていただきました

こちらが防染糊、わかりやすいように色をつけていただきました

そしてこちらが型紙

そしてこちらが型紙

この刷っていく作業がまた難しい

この刷っていく作業がまた難しい

※糊がのっている部分は色が入らず染まりません。糊以外のところを染色することで、柄が生まれます。糊が乾いたら、染色、刷毛染めの工程になります。 型紙は、私は師匠から譲り受けたものを持っていますが、その中には100年以上前のものもあります。それだけ長持ちする型紙、そこにも日本の伝統的な技術力の高さか表れています。

 

棚にぎっしりの型紙、ここ以外にも!

棚にぎっしりの型紙、ここ以外にも!

伝統を踏襲したオリジナル

【藤本さん】次は木版染めです。この柄は、私の興味のきっかけである更紗という木版染めの原点の柄です。正倉院で見た柄は、こんな様な柄だったのです。

 

木版に色を付けます

木版に色を付けます

木版に色を塗って、生地に押していきます。版は1つの柄で、何回もそれを続けて押して、つなげていきます。最初私が試行錯誤していた時は、大きな版を彫って一度に大きな面積に柄を押したのですが、それだと力が全体に伝わらず上手く色が生地にのりませんでした、その時正倉院でみた木版染めのことを思い出し、小さな版で何回も押していくということに気がつきました。

 

1つの版をつなげて柄を作っていきます

1つの版をつなげて柄を作っていきます

こちらが藤本さんが彫った木版

こちらが藤本さんが彫った木版

そこから、小さな柄を組み合わせていく、ということを思いついて、木版染めが面白くなってきましたね。映画「めぐる」では桜の柄を一つ一つ押していっていましたが、その様な柄の場合は、次に押す箇所を考えながら、押し続けていきます。

 

※「めぐる」は石井かほり監督作品、木版染めのドキュメンタリー映画です。

 

「めぐる」で使用された桜の木版

「めぐる」で使用された桜の木版

これは全くの私のオリジナルです。これは母娘のお客様から頼まれたのですが、猫好きということで、猫の柄を依頼され、新しく彫りました。

 

猫の木版を組み合わせて

猫の木版を組み合わせて

こんなに可愛い染めになります

こんなに可愛い染めになります

このように、古来の木版染めをもう少し自由にできるのではという発想でこういったやり方をしています。例えば、1つの柄を押している最中に、他の柄を入れたくなったら、その時点で新しい柄を彫るということもあります。 こちらは先ほどの更紗に実際に色を入れたものですね。木版で柄を押した後に、その周りに色を入れていきます。

 

このやわらかい風合い

このやわらかい風合い

ちなみにこの柄(更紗)は、昭和30年ぐらいに彫ったものです。最近では少し(凹凸が)減ってきました。

 

【COB】減るんですね!? まあ木ですものね。それも味になりますね。

 

コラボレーションによる新しい発想、刺激

【COB】タンブラーの柄なんかも、生地を染めて作っていますね。

 

【藤本さん】あれは川越のお客さんのアイディアでした。お客さんからのアイディアは結構あるんです。今着物自体はあまり着られなくなってきてますが、それが染色の衰退かといえばそうではなくて、染め布自体は小物などに重宝されます。

 

工房内には魅力的な作品がいっぱいあります

工房内には魅力的な作品がいっぱいあります

今も美大の学生さんから多くの相談を受けたりしますが、染め布をどのように扱ってくれるか、そのアイディアが私にも大変刺激になります。なので、そういうことには絶対協力します。ワークショップもやっていますが、伝統を守りつつ、若い人たちと新しいことに挑戦する、またそれで若い人たちが、自分のやっていることを将来につなげてくれれば、こんなにいいことはないです。

 

 

伝統技術、手仕事の過去と未来を見据えた藤本さんのこだわりは、大変貴重だと思います。藤本染工芸の手仕事、作品を見たい、体験したいという方は、ぜひ工房へ足を運んでください。

 

有限会社 藤本染工場
東京都八王子市元横山町1-24-2

042-642-8804 ※電話で確認の上お伺いください。

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