ものづくり検索

第一線で活躍するデザイナーを支える織物工場

2018.6.5

世界的に注目される日本のファッションブランド「(株)ミナ 」や奈良から日本全国に日本工芸を雑貨として発信し続ける「(株)中川政七商店」など、著名なブランドから個人デザイナーの依頼まで、多様な要望に応え続けている織物工場。住宅街である小門町の一角にある有限会社大原織物を訪ねました。

 

 

有限会社 大原織物とネクタイ

【COB】小門町って住宅街のイメージがあります。その立地と、先ほど入ってくる時に、建物を見て工場に大分歴史があるような印象を受けました。創業などの経緯を教えて頂けますか?

 

代表取締役大原進介さんにお話を伺いました

代表取締役 大原進介さんにお話を伺いました

【大原さん】この場所では1960年創業で父親が初代ですが、私のおじいさんがこの近くで元々織物工場をやっていましたので、「大原織物」としては120年ぐらいになると思います。おじいさんは大原平吉といって、その元の創業の時からネクタイやっていました。おじいさんの名前はこの文献に残っていますよ。

 

八王子ネクタイ、その源流の一つ!それにしても、明治10年生まれ

八王子ネクタイ、その源流の一つ!それにしても、明治10年生まれ

【COB】ネクタイってそんなに昔から需要があったのですね。

 

【大原さん】うちのおじいさんがやっていたのは大正デモクラシーってあったでしょう、それぐらいから。もうそのころは着物から洋服になっていってるから、ネクタイ自体は明治維新の時代もあったでしょう。

 

【COB】確かに、もうスーツで写真を撮っていましたね。話が大分タイムスリップしてしまいましたが、現在はどのようなお仕事になりますか?

 

シルクオーガンジーから、デニムまで

【大原さん】今は生地です。服地、傘地、バッグ、マフラー、ストール、時計バンドなんかも一時期やっていました。某電機メーカー、売れ筋商品のバンド部分です。

 

意外なものまで手がけていらっしゃいました

意外なものまで手がけていらっしゃいました

デニムも織ることができます。簡単に言うと、シルクオーガンジーから、デニム生地までできます。ウチはそういうキャッチフレーズになりますね。

 

【COB】他の工場でもそれぞれ不況のお話は伺っておりますが、やはり不景気の時代の影響で扱うものが変わって来たと。

 

【大原さん】その時ウチは大打撃を受けまして、ファッション協議会の仲間に助けられました。その頃はネクタイと同時にマフラーやストールもやっていたので、みんながそう言った仕事を紹介してくださって、今に続いています。

 

【COB】「ミナ ペルホネン」の皆川氏との出会いはもちろんその後ですよね?

 

【大原さん】「ミナ」の創業からだから、もう20年やっています。今もメインは「ミナ」の生地です。彼も昔は八王子に住んでいて、一時期はファッション協議会にも入っていましたね。

 

「ミナペルホネン」の本には大原さんの手がけた生地が大多数!

「ミナ ペルホネン」の本には大原さんの手がけた生地が大多数!

【COB】今も打ち合わせに来るんですか?デザイナーさんとの打ち合わせってどんな風に行うのでしょうか。

 

【大原さん】皆川氏は本人が普通にスタッフと来て、打ち合わせしますよ。先方が図案と素材決めて、「こんなのやりたいです。」「はいわかりました。」って感じです。近頃はより良い素材を指定してモノ創りも増えています。

 

できないって言ったら終わり

【COB】色々な依頼の中には無理難題とかもあるのでは?

 

【大原さん】そういうものも「ノー」とは言わないです。できないって言ったら終わり。実現させちゃいます。それか歩み寄って、ここまでなら出来るよ?とか。デザイナーさんは世の中に無いものを追求しています、それに極力応えています。

 

例えば、一時期水玉が流行って来た時に、一人目のデザイナーさんが水玉図案持って 来て、時間をおいて二人目のデザイナーさんも水玉持って来た時に、先のデザイナーさんのことを教えたら、じゃあ 私水玉止めます。なんてこともありました。 

 

【COB】その姿勢に大原さんのオリジナル、想いを感じますね。結構工夫に時間をとられそうですね。織り機はジャガードとドビーでしたよね。

 

コンピュータージャガードについて

【大原さん】ジャガード4台とドビーが2台で稼働しています。

 

工場を見学させていただきました

工場を見学させていただきました

※デザイナーさんから依頼されている生地のため、柄は公開できません。

 

操作はコンピューターから自分でやっています。デザインの図案をスキャン、それに合わせて組織のプログラム、そのデータを3.5インチのフロッピーディスクで織り機に移せば、機械がデザイン通りに生地を織り上げてくれます。昔は図案があって、意匠屋さんがいて、紋紙屋さんがいて、と人手がかかったのを今はコンピューター1台で3役こなせます。便利になりました。

 

工場内にフロッピーディスクを発見

工場内にフロッピーディスクを発見

【COB】フロッピー、USBではないんですね!

 

【大原さん】一応、USBも使えるようにはしています。 こちらは今シルクを織っています。ストールになります。

 

織り機の説明をして頂きました

織り機の説明をして頂きました

この縦に伸びる紐の束がプログラムの指示通りに決められた縦糸を持ち上げます

この縦に伸びる紐の束がプログラムの指示通りに決められた縦糸を持ち上げます

その隙間に緯糸を通していき柄が織られていく

その隙間に緯糸を通していき柄が織られていく

透き通るような生地が織られていきます

透き通るような生地が織られています

八王子シルク、できます

そういえば、八王子の養蚕農家でとれたシルクを織っているのは八王子でウチだけです。養蚕農家は今八王子では5件ぐらい、製糸を除けば、生地まで全て八王子で完結できます。

 

【COB】そうなんですね! 八王子の魅力につながること、一つ頂きました!

 

シルクの精錬や、蚕についても楽しいお話を頂きました

シルクの精錬や、蚕についても楽しいお話を頂きました

求められている技

【COB】企業ではなく、個人のデザイナーさんや学生からの依頼もありますか?

 

【大原さん】年間2、3人はいます。去年は文化服飾学院の学生さんの卒業制作をやりました。今年はすでに一人、個人のデザイナーさんの案件やっています。シーズン毎に頼んでくれるデザイナーさんもいますし、そういった方は展示会開いて、販売していますが毎回DMを持って来たり、送ってきてくれます。

 

展示会のおしゃれな招待状、DMがたくさん

展示会のおしゃれな招待状、DMがたくさん

【COB】皆様こうやって知らせてくれるのですね。そこに大原さんとデザイナーさんとの信頼関係が垣間見ることができます。

 

デザイナーさんの発想を形にするため、縦糸と緯糸の織りなす可能性を掘り下げていく、同じジャガード機の工場はあれ、大原さんの工夫(技)やデザイナーさんと共に生地を作り上げてく挑戦心は、大原織物特有のものであり、そうしたモノ創りの姿勢が求められる理由でしょう。

 

発想してみたものの、生地作りでつまずいてしまったデザイナーさん、一度大原織物に相談をしてみてください。もしかしたら、大原さんが解決のキーマンになるかもしれません。

 

有限会社 大原織物
東京都八王子市小門町8-19

TEL 042-6623-0515